派遣コンプレックスに悩むあなたへ~彼女が正社員を諦めた日~




「もう少し胸を張って歩いた方がいいよ」

僕がとある彼女に伝えた最初のアドバイスだ。

 

今日は「派遣コンプレックスに悩むあなたへ」と題して、派遣という立場に悩まない為の考え方を僕の経験を交えて話していきたいと思う。

 

どこにでもある話だ。

この記事を読んでくれたあなたに、何か大きな変化が訪れるかどうかなんて、僕には約束できない。

 

しかし派遣社員という立場のあなたに、この記事が少しでも前向きになれるきっかけを与えられるとしたら、僕にとってこれほど嬉しいことはない。

 

派遣コンプレックスに悩む全ての方へ。

ぜひお付き合い頂ければと思う。

派遣事務員がやって来た

今からちょうど3年前(2017年)、個人事業主を止めたばかりの僕は派遣会社からとある会社を紹介された。

 

業種はネットワークインフラの営業や、メディアコンテンツなどを運営する上場したばかりのマーケティング会社で

それまで一般企業や個人の営業マンという働き方を経てきた僕にとって、派遣という雇用形態はある意味、未知のモノだった。

 

派遣初日、担当のコーディネーターに付き添われて中洲という歓楽街から徒歩10分程度のビルへと出向き

オープニングという形で10名程のスタッフと同じく、僕は派遣社員としての日々をスタートすることになった。

 

正直、それまでの自分の経験から「これが仕事なのか?」と思えるような簡単な仕事内容に少し疑問を抱きながらも

新しい事業所として慌ただしく駆け回る正社員を尻目に、僕は与えられた仕事をこなし売り上げに貢献する毎日を送っていた。

 

それからしばらくして

年が明けた2015年の1月末

 

決算前ということもあってか多忙を極めていた会社は、人手不足を解消するべく新しく女性派遣事務員を採用していた。

 

とある駐車場が隣接する喫煙所。

出会い頭に「何歳なんですか?」

それが彼女と交わした最初の言葉だった。

 

猫背で歩く事務員さん

彼女がやってきて1ケ月。

 

元々はそれぞれ違う部署で仕事をしていたが、更なる人手不足で彼女は僕の在籍していた部署に事務としてやってきた。

 

彼女は僕に対してかなり距離を置いていた。

今思えばかなり嫌われていたようにも思う。

 

当然だ。

 

最初に投げかけた「何歳なんですか?」という僕の唐突な質問を、今でも僕自身は全く覚えていなかったし

いい大人が初対面の女性に対して、突然年齢を訪ねるなんて正気の沙汰ではない。

 

なぜそんな質問を突然したのか

当時の僕はそれが全く分かっていなかったが、ここでは長くなってしまうので触れずにおく。

 

彼女は仕事が速い人だった。

仕事ができるという表現では到底追いつかないような、事務員としての処理能力や圧倒的なコミュニケーションスキル。

 

あまりに仕事が速く、終業3時間前にも関わらず「1日分の時給出すから上がっていいよ?」と言われる程だった。

もちろん彼女の性格上、それを受け入れるはずもなくキッチリと1日の時給分を働いて帰宅していたようだが・・・。

 

いつでも笑顔で仕事をこなす彼女の周りには、まるでアイドルを取り囲むかのようにいろんな人が居た。

 

仕事が速く人望もあり、同じ派遣スタッフからも注目されているのは僕の目から見ても明らかだった。

もちろん正社員も例外ではなかったが、そんな環境の中で仕事をこなす彼女の姿に、僕はいつも矛盾を感じていた。

 

なぜ矛盾を感じたのか?

それは彼女の歩き方に他ならなかった。

 

「なじめない」

「負け犬の集まり」

「誰も仕事ができない」

 

彼女が実際にそう語ったわけではないが、彼女の姿勢や歩き方にそんな言葉を感じずにはいられなかった。

普段は誰からも親しまれ、笑顔で仕事をこなすのにも関わらず、そそくさと背中を丸めて職場を後にする姿に、僕の疑問は晴れなかった。

 

 

とある出勤日、僕はそんな彼女に恐らく嫌われているだろうにも関わらず、接触を試みた。

会社で毎日出勤時に予め決められている名前が表記された座席表を無視して、僕は彼女の隣に突然座ったのだ。

 

「とりあえずさ?歩くときは胸を張って歩いた方がいいよ?」

「俺は猫背で歩く人間は嫌いだから、ちゃんと歩いた方がいい」

 

そんな言葉を僕はぶしつけに彼女に伝えた。

 

困惑する彼女。

それも当然だ。

 

望んでもないのにいきなり隣に座られ、いきなり年齢を聞いてくるような失礼な男に「猫背の人間は嫌い」と言われても敬遠されるだけだ。

 

仕方がない。

僕はお節介な性格だ。

よかれと思っての行動だった。

 

その日は彼女に1日中無視された。

しかし嫌われたとしても彼女にはどうしても伝えたかったし、僕の中では何故そんな行動に出たのかはもう明白だった。

 

そして翌日・・・。

 

また偶然彼女と休憩所で鉢合わせた。

彼女と僕の身長差は30センチ。

気まずい空気が流れていた。

 

思わずうつむく僕を見上げるかのように、彼女は「おはよう!今日もよろしくね!」と言葉を残し笑顔で去っていった。

 

思わぬ彼女のリアクション。

何があったのか?

 

あえて僕は彼女に聞かなかったが、何かしらの彼女の中で意識や考え方に変化があったのは間違いなく

いつも以上の笑顔で、センターを走り回り仕事をする彼女の姿に、逆に僕が元気をもらったことを覚えている。

 

気づけば数か月・・・オープンから月日が経ち、季節はもうすぐ僕の誕生日を迎える梅雨入りに差し掛かっていた。

 

派遣切り

入社して約半年。

 

派遣先の会社も業務が増え、それと同時に売り上げも加速を見せ、マネジメント的にも落ち着き出だした頃

ようやく僕も突然年齢を聞く失礼な男というレッテルから解消され、彼女と色んなことを話す中になっていた。

 

そんな6月の初め頃

ふと彼女から打ち明けられた。

 

「ねー私6月末で契約切れるんだよね」

「え?なんで!?」

 

過去に派遣という仕事を経験してこなかった僕とって、彼女の言葉は全く理解できるものではなかった。

 

何故これほど仕事ができる人が契約を切られるのか?そんな思いが一瞬、頭の中を駆け巡っていた。

その晩の帰宅後、それまで大して気にも止めていなかった派遣会社の契約書類に、僕は細かく目を通した。

 

「そうか・・・これが派遣切りか」

 

後日談で分かったことだが、僕と彼女が休憩所などで会話していることを良く思わない正社員が複数いて

派遣会社と口裏を合わせた結果、彼女の方を契約終了という名の派遣切り対象としてリストアップしていたのだ。

 

事務員の彼女

営業トップの僕

 

会社からすればどちらとも気にくわったのだろうが、どちらかを残すといえばそれは必然的に僕になるだろう。

事務員はいくらでも換えは利くが、営業ができる都合のイイ派遣社員となれば話は別だったようだ。

 

本当にどうしようもない会社だ。

 

当然これまでの経緯から、僕が彼女の次の働き口や今後の人生相談を受けるのは自然の流れだった。

 

正社員だけが全てじゃない

その日の夜20時頃。

職場近くの公園で彼女と話をする事になった。

 

今思えば、どういう流れでそんな話になったのか覚えてないが、話の内容は僕と出会う以前の彼女の過去の話になった。

 

何故あれほど彼女が仕事をひたむきに頑張っていたのか?

 

それは従来の彼女の性格でもあるが、話を進めていくにつれ、理由はどうやらそれだけではないことが分かった。

そしてその理由は彼女が背中を丸めて歩いていたこととも、無関係ではないということも次第に判明した。

 

「私ここにくるまで職業訓練校に通ってたんだよね。それで私と同じ時期に卒業した9割以上の人が正社員に内定してるんだけど、私だけ仕事が決まってないんだよね・・・」

 

どうやら彼女は、それまで職業訓練校で事務職のスキルを身に付け数えきれない程の面接を受けてきたが

なかなか内定を得られずに、ひとまず僕が務めている派遣先に「間に合わせという形で働きに来ていた」という事を話してくれた。

 

人通りの無い公園で言葉を並べる彼女。

 

「正社員にならなきゃいけないプレッシャーが常にあったんよね。家族も何も言わないけど早く就職することを望んているのも知っててさ。その上、知人には正社員じゃなきゃ人間じゃないって言われて・・・」

 

そんな言葉が並ぶ中で、彼女は無言のプレッシャーと毎日闘いながら精神的に追い詰められていたことを打ち明けてくれた。

 

「正社員にならなきゃダメなんよ」

「絶対にならなダメとって」

 

どれほどの間があっただろう。

今でもよく覚えていないが、ただ彼女の顔を見なくても彼女が泣いていたことは充分に分かっていた。

 

「正社員だけが全てじゃない」

涙ながら過去を打ち明けてくれた彼女に対して、僕はそう答えた。

 

「肩書きは関係ない・・・そんな事よりも自分の仕事や自分が決めたことに胸を張れるかが大事だと思う。周りなんて関係ないと俺は思うよ?」

詳しくは覚えていないが僕は彼女に優しい言葉を掛けるよりも、自分の仕事や生き方に対しての価値観を伝える、そんな言葉を伝えた。

 

気づけば時計の針は24時。

真夜中の公園にうつむく男と泣き崩れる女。

 

事情をしらない通行人が見たら誤解されかねないシチュエーションだが、他人の目なんか気にならない特別な時間が流れていた。

 

僕の言葉が彼女をどう変えたのか?

 

それは彼女に聞いてみないと分からないが、彼女はこの日、正社員になることを諦めた

そんな彼女は今、あの頃以上の笑顔で毎日自由を求めながら、僕の隣でブログを書いている。

 

派遣コンプレックスに悩むあなたへ

今回の記事を書くにあたって、派遣社員としての働き方や色々なインタビューを彼女に敢行してみた。

 

「派遣コンプレックスに悩む人に何か伝えたいことある?」

そんな僕の質問に対して、彼女は次のような回答をしてくれた。

 

「正社員は否定しないけど本当にその会社でいいのかを考えて欲しい」

 

なるほどと思わずうなってしまったが、一つの価値観から解放された彼女らしい言葉だった。

 

続けざまに彼女は以下のような言葉を返してくれた。

 

「お金や仕事も大切だけど、自分を見失う前に心のバランスを大切にしてほしいと伝えたい」

「正社員だろうが派遣だろうが、アルバイトだろうがパートだろうが関係ない、大切なのは自分に誇りを持つこと」

 

過去を回想し涙を浮かべながら話す彼女に、質問してしまったことを後悔したが、彼女は最後にこんな言葉をくれた。

 

「派遣だからなんて関係ない」

「胸を張って歩いてほしい」

 

迷いの無い彼女の言葉が何故か僕も誇らしく思えてならなかった。

 

彼女の言葉があなたにとって何かの大きなきっかけになれば、僕はとても嬉しい。

 

それではまた。

アリーヴェデルチ。

 

派遣を辞めたい?メリットとデメリットを見直して考え方を変えよう!

2017.09.04

「派遣だから」とバカにされるあなたへ~辞めたいとは言わせない5つの行動~

2017.09.09








シェアはこちらからお願いします